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ハイブリッドロケット- 旋回流制御型ハイブリッドロケットエンジンの最適推力・混合比制御
- ハイブリッドロケットを基盤とした宇宙輸送システム形態検討
- 後退速度向上のための新たな燃料開発
- 超臨界状態の液膜の不安定性解析
- 長時間の燃焼シミュレーション
- 旋回流型ハイブリッドロケットの数値計算
- 固体ロケットの微細構造と燃焼速度の関係
- 固体推進薬スラリの注型解析
ハイブリッドロケットとは...
ハイブリッドロケット
- 酸化剤/燃料のどちらかが固体(図1)
- 液体や気体の燃料/酸化剤を噴射して燃焼させるロケット
- 殆どのハイブリッドロケットは酸化剤が流体
ハイブリッドロケットの長所
- 消炎や再着火、推力の制御が可能
- 自燃性が無く(火薬換算がゼロ)安全、管理が楽、毒性の無い酸化剤が利用できる
- 比推力(燃料消費あたりの推力)が固体ロケットより高い
ハイブリッドロケットの実用化例
- 宇宙旅行用往還機 SpaceShipOne(図2),
SpaceShipTwo(開発中、図3) 米 Scaled Composites 社 - 国際宇宙ステーション往還機 Dream Chaser(開発中) 米 SpaceDev (Sierra Nevada 子会社)
- 日本においても研究段階での打ち上げを実施(首都大、北大)
ハイブリッドロケットの技術課題
- 燃焼メカニズムが他のロケットより複雑で、十分理解されていない
- 燃料後退速度(≒燃料の消費速度)が遅く、燃料、酸化剤、燃焼器を工夫する必要がある
- スケール依存性があるため、小型試験用エンジンでは大型のエンジンの性能を予測しづらい
技術課題克服のために
- JAXA 宇宙科学研究所を中心としたハイブリッドロケット研究ワーキング・グループHRrWGが組織
- 本研究室もWGに加わり数値計算、実験の両側面からハイブリッドロケットに関わる現象の研究を行っている
超臨界状態の液膜の不安定性解析
担当:足立将基 (OB)
従来の
ハイブリッドロケットの課題
- HTPB(末端水酸基ポリブタジエン)を燃料として使用しているため、燃料後退速度が遅い
- ⇒より燃焼の速いワックスを燃料とすることに注目が集まる
ワックスの
燃焼速度向上プロセス(図1)
- 燃焼の熱によって燃料が融解
- 液滴が後方に飛び(エントレーメント現象) 後退速度が上昇
本研究の目的
- ワックス液滴を超臨界状態としてモデル化した研究は非常に少ない
- 融けたワックスの超臨界状態を模擬した数値解析を行い、ワックスの液層の不安定性についての理解を深める(図2)
後退速度向上のための新たな燃料開発
担当:北川幸樹 助教
従来型ハイブリッドロケットの燃料
末端水酸基ポリブタジエン(HTPB)、ポリプロピレン、アクリル樹脂など欠点:燃料後退速度が小さい
燃料として注目されている物質
ワックス(蝋燭の蝋)、熱可塑性樹脂、Glycidal Azide Polymer (一定圧力以上で自然性を持つポリマー)欠点:機械強度が低い
本研究の目的
機械強度と高い燃料後退速度を両立した燃料の開発研究アプローチ
珪素原子は熱分解を促進するため、従来型燃料に珪素を含むモノマー(メタクリル酸3-(トリメトキシシリル) プロピル(図1)等)を合成する熱分析実験結果(図2,3)
熱分解の速度向上を確認、ポリプロピレンやアクリル樹脂の10倍程度の燃料後退速度を実現できると予測されている長時間の燃焼シミュレーション
担当:船見祐揮 (OB)
ハイブリッドロケットの燃焼・流れ場
内部現象:燃料の熱分解、相変化、飛散、化学反応、固体燃料への熱伝達、境界層燃焼上記の現象が複雑に絡み合ってる
高精度なシミュレーションは先行研究で行われているが、計算負荷が高く燃焼時間全体に渡る長秒時の解析は十分に行われていない
⇒実際のロケットの設計に有用とは必ずしも言い難い
本研究の目的
計算コストが低く設計に有用な解析ツールの開発研究アプローチ
燃焼特性の理解に支障が出ない程度に現象のモデル化を簡単化し精度とのバランスを取る計算結果
燃料後退速度のオーダーや変化の傾向は実験値に近い課題
燃焼室圧力の実験値と計算値の差が大きい⇒燃焼不安定の可能性などを解析によって指摘できることを目指す
旋回流型ハイブリッドロケットの数値計算
担当:本江幹朗 (OB)
共同研究:東海大学平岡研究室、
首都大学東京湯浅研究室
共同研究:東海大学平岡研究室、
首都大学東京湯浅研究室
研究背景
燃料後退速度向上のため、酸化剤を旋回させて供給する方法が提案されている(図1)旋回流方式の有効性は既に地上試験等で確認されているが、後退速度向上のメカニズムが明確に解明されているわけではない。
研究の目的
- 旋回流方式の燃料後退速度向上のメカニズム解明
- 酸化剤流入条件の最適化
研究アプローチ
簡単のために燃料の燃焼を考慮せず、燃焼室内に旋回流を噴射した場合の流体の挙動を解析計算結果
十分な時間が経過するまでの旋回流の様子、圧力やマッハ数などの分布を得た(図2~4)今後の課題
燃料の燃焼反応などの複雑な物理現象も考慮したモデルを導入して数値解析を行う旋回流制御型ハイブリッドロケットエンジンの最適推力・混合比制御
担当:小澤晃平(D1)
研究背景
打ち上げロケットはロケットそのものやペイロードの構造からくる加速度制限の下、空気抵抗と重力のロスを最小限に抑え効率よく加速するため、推力を適切に変化させながら飛行しています。 ハイブリッドロケットは液体ロケットと同じく、能動的な推力制御が可能です。酸化剤流量はバルブ制御で直接決定できますが、燃料蒸発量は酸化剤流量に対し受動的に決定されます。しかし、燃料蒸発量は酸化剤流量に対し非線形に変化するため、推力制御を行うと、酸化剤と燃料の混合比が最適値からずれてしまいます。これをO/Fシフトと呼びます(図1)。また、O/Fシフトは長時間燃焼することで固体燃料グレインポート径が拡大し、燃料後退面が拡大することでも起こります。O/Fシフトは比推力の低下を引き起こし、更に酸素リッチ側のO/Fシフトは、ノズルスロートのエロージョンを早める可能性もあります。研究の目的
嶋田研究室では、O/Fシフト解決のため、酸化剤の旋回噴射と軸流噴射を組み合わせた燃料蒸発量を酸化剤の量と独立に制御する技術を世界で初めて提案しており、理論研究、シミュレーション、エンジン燃焼実験を行っています。研究手法
本研究では、酸化剤流旋回型ハイブリッドロケット(Swirl Oxidizer Flow Type Hybrid Rocket: SOFT HR)に着目し、それを応用することでO/Fシフトの解決を目指しています。SOFT HRとは燃料後退速度を向上する目的で酸化剤流を燃焼室内で旋回するよう噴射する方式のエンジンです。この方式では、酸化剤流の旋回を強くする程燃料後退速度が多くなる性質があります。この現象を応用し、酸化剤供給系を軸流噴射分と旋回噴射分の2系統に分けて燃焼室に噴射し、各系統の流量割合を調整すれば、エンジン動作中に旋回の強さのみを制御して燃料の蒸発量を酸化剤の量と独立に制御できます(図2) 。これによって最適なO/Fで目標の推力を出すことができると考えられます(図3) 。また、この方法はバルブ一個と配管増設のみで実現できるため、単純な供給系というハイブリッドロケットの優れた特徴を維持できます。これを本研究室では酸化剤流旋回強度可変型ハイブリッドロケット(Altering-intensity SOFT HR:A-SOFT HR)と呼んでいます。研究計画
燃料の燃焼反応などの複雑な物理現象も考慮したモデルを導入して数値解析を行う- 1. SOFT HRの研究を元にしたA-SOFT燃料後退速度予測理論の構築(2014年~)
- 2. 観測ロケット飛翔シミュレーションモデルによるA-SOFT観測ロケット到達高度向上幅の推定(2014年~)
- 3. エンジン内部流れの燃焼流シミュレーションによる旋回-軸流噴射合流特性の把握、過渡現象の解明(2015年~)
- 4. 酸化剤の旋回-軸流噴射流量比と燃料後退速度の実験データ取得(2015年~)
- 5. エンジン燃焼中の酸化剤バルブ制御による混合比と推力の独立制御技術の実証(2015年以降)
- 6. A-SOFT HRの最適推力・混合比フィードバック制御則の確立、実証(2016年以降)
ハイブリッドロケットを基盤とした宇宙輸送システム形態検討
担当:臼杵智章(M2)
研究背景
宇宙利用は低コスト大量輸送形態へ転換期を迎えています. 持続的な宇宙利用のためには従来と異なるロケット運用形態を確立する必要があり,各国がそれを模索しています. ハイブリッドロケットは現在主流の固体・液体ロケットと比して著しく爆発リスクが低く,危険性に起因するロケット運用コストを根本的に削減できると考えられます.一方で推進性能面では固体・液体ロケットとは異なる特性を有しており,その性能を最大限発揮できる運用形態は未だ開拓途中です.有翼・空中発射方式のSpaceShipTwoのように,従来型ロケットとは異なるユニークな運用形態が成立する可能性が数多くあります.研究の目的/手法
ハイブリッドロケットを基盤とした低コスト宇宙輸送形態を検討し,実用化に際する課題をシステム工学レベルで抽出します.数理モデルとしてエンジンモデルおよび飛行力学モデルを用い,飛翔軌道設計および飛翔性能評価を行います.さらに多目的設計を行い,普遍的に成立性の高いシステム形態を抽出します.計算結果の紹介(A-SOFT-HRの評価)
観測ロケットにA-SOFT-HRを搭載した場合の飛翔性能変動を評価しました.遺伝的アルゴリズムによりA-SOFT-HRの酸化剤流量フィードフォワード制御系を設計(図1)することで推力制御能力を最大化し, 旋回強度を制御しない場合(図2:黄色軌道)と比較して最大到達高度が15%程度向上しました(図2:赤色軌道).今後の研究計画
- ・多目的最適化により,複雑な飛翔軌道を持つミッションに対する性能評価を行います.
- ・複雑な飛翔軌道に対応可能なA-SOFT-HRのフィードバック制御則を構築します.
n2o
担当:(M1)
研究背景
研究の目的
研究手法
計算結果
研究計画
固体ロケットとは...
概要
- 固体の推進剤を燃焼させ、大量のガスを発生させて推力を得る
- ロケット花火も固体ロケットの一種
固体ロケットの長所
- 液体ロケットよりも大出力を発揮できる
- 燃料を充填したまま保存できるため打ち上げ準備に時間を要しない
固体ロケットの例
- M-Vロケット
- イプシロンロケット
固体ロケットの課題
- 液体ロケットよりも燃焼時間が短い
- 推力の動的制御ができない
- 推進剤構成物の危険性・毒性が高い
固体ロケットの微細構造と燃焼速度の関係
担当:小菅裕紀(OB)
研究目的
- 推進薬中酸化剤粒子の配向性と燃焼速度との関係の把握
- 燃焼速度の詳細な予測
研究アプローチ
- 実際にコンポジット推進薬・疑似推進薬を製造
- マイクロX線CT装置による非破壊検査
- 得られた断面画像データから粒子の3次元データを作成
研究進捗
- 酸化剤粒子の配向性により燃焼速度が変化することを確認
固体推進薬スラリの注型解析
担当:高田智弘(OB)
スラリとは
酸化剤粒子・金属燃料粒子・燃料をつなぎ合わせる液体燃料(バインダ)が混ざった泥状のもの推進剤の製造法
スラリを型へと流し込み、固めることにより製造研究目的
流し込む際の、推進薬内部の酸化剤粒子の偏りと燃焼速度との関係性の把握研究のアプローチ
- 固体ロケット推進薬の製造を模擬したシュミレーション
- 流体解析ソフトFLUENTを使用して実施